北アルプス国際芸術祭2017~市街地エリア~
長野県大町市で開催されている北アルプス国際芸術祭~信濃大町食とアートの廻廊~をまわってきました。作品をみてまわることも面白かったですが、その道々で大町の自然や人々の暮らしに触れることができて楽しかったです。
「水、木、土、空。」をメインテーマとし、36組の作家が創り出した様々な作品を鑑賞できます。ちなみに6月4日~7月30日まで開催中です。
芸術祭の作品は大まかに5つのエリアに分かれて展示されていて、今回の記事では信濃大町駅周辺の市街地エリアで気になった作品をいくつか紹介していきます。
「∴ O = 1 change-and-conservation」栗山 斉
最初に行ったのは商店街の裏手にある蔵にあったこの作品でした。
日光が遮断され冷やされた蔵の中は暑い外の世界とは違う世界のようでした。
北アルプスの豊かな自然が織りなす循環システムを縮図化し、蔵の中に再現。状態の変化によって現れては消えていく、水のさまざまな姿を、蔵全体を使ったインスタレーションによって表現する。
ぱっとタイトルに目を通したときにコンピュータのイメージや、伊那にあるゼロ磁場のことを考えたりしましたが、「0=1」とは作家の自作の仮説で
「0」は 無、消滅、静
「1」は 存在、生成、動といった概念を示し
数字では相反するはずの2つは現実世界においては「0=1」となり得ることを「水の循環」という自然の法則によって実証した作品でした。
隣の蔵には北アルプスの山々を氷で型どったものなどが展示してありました。
この氷の山はやがて溶けて水になりますが、その物質が消えてしまったわけではなく状態を変えて存在し続けます。昔、理科で学んでそのことを理解しているつもりでも、目に見えないとなかなかそれを意識することは難しいものだけど、こうやって改めて考えると不思議な体験で面白かったです。
「たゆたゆの家」原倫太郎・原游
受付から中に入った1階の展示室にはライトで照らされたモビールの影や、床に設置されていた水に反射した光が部屋中で揺れていて、まさにたゆたうの家という感じでした。
「たゆたゆ」は、ものがゆらゆらと揺れる様を表す「たゆたう」を擬音化した作家の造語。
水をテーマに、大自然や歴史、語り継がれた物語を家のなかに呼び込み、人と土地、人と人がつながり、たゆたう場となる。
2階にもあげれました。
一目見たときに(え?首吊り台???)とか思ってしまったのですが、このロープを手前に引くと部屋の奥にある液体の入った容器から棒が上がってきて、扇風機の前にある格子の紐に液がついてシャボン玉ができます。
説明へたすぎ?
廊下。
つくりはよくある日本家屋ですが、壁の色を変えると雰囲気も変わり面白いです。
「第1黒部ダム」栗林隆
「黒部の太陽」の舞台となり、世紀の大事業と謳われた黒部ダムと足湯を組み合わせた作品。行ったときちょうど霧が流れてきてなかなかの迫力がありました。
この日は日差しも強く植物も枯れ気味。
「ちかく・とおく・ちかく」ニキータ・アレクセーエフ
商店街のあちこちや、ギャラリー内に飾られた108枚のドローイング。
はじめはあら可愛らしい絵、なんて思いましたがみていくうちになんとなく怖くなっていきました。ずっとみているうちに自分が鳥かドローンかになってすごい速さでその3枚で描かれたものに近づいたり遠ざかったりしているみたいでくらくらしました。
アレクセーエフは日本文化に造詣が深く、作品は『源氏物語』などの日本の古典に登場する信州の伝承『帚(はは)木(きぎ)』を背景とし、永遠に繰り返されるのに到達できないというイメージや、儚さや脆さをテーマにしている。作家の人生観と哲学が表れた作品。
帚木・・・信濃(長野県)の園原 (そのはら) にあって、遠くからはあるように見え、近づくと消えてしまうという、ほうきに似た伝説上の木。転じて、情があるように見えて実のないこと、また、姿は見えるのに会えないことなどのたとえ。
単純に考えると、108枚って煩悩?
人間は延々と死ぬまで何もつかまえることができないのかなー
そうやって繰り返すことが人生ならむなしいしおっかないと思いました。
「北アルプス 高瀬川庭園」高橋治希
磁器で作られた植物で室内に庭園を作り出した作品。
繊細な線が流れるように空間に配置されていて美しかったです。
大町名店街。
いまだ昭和の風情を残していて良い雰囲気。
ご飯はこの通りにあるハングリーボックスユキで食べました。
ナスのトマトスパゲティ、ベーコン抜きで。
なぞのおいしさでした。
店内もすごく懐かしい感じがして居心地が良かったです。
「全ては美しく繋がり還る」淺井裕介
名店街の通りの地面にも作品が描かれていました。
ひとつひとつの絵が面白くて立ち止まってはまた歩き、という感じでした。
『信濃大町2014―食とアートの廻廊―』で大町名店街に制作·展示された作品。
「水と植物」をテーマに、道路に白線を描くための素材を、さまざまな参加者に切り抜いてもらい、名店街の路面にモザイクのように定着させた。
高度経済成長期に栄えた昭和の風情を残す名店街に、いくつもの物語が重なり絡まりあい、オリジナルの地上絵が完成した。
現在もこの絵は残り続け、人々の生活に溶け込むとともに、信濃大町を飾っている。
「私は大町でー冊の本に出逢った」ジミー・リャオ
古書を大量に集め、美しい絵を描いた新しいブックカバーで覆い、さまざまな国の言語でタイトルをつけ、書店に並べる。
また、旅人がメッセージを残せるように白紙の本も用意するほか、絵葉書、ノート、ブックカバーなどのグッズも販売。
あわせて信濃大町の街中に移動式カートによる「街中図書館」も展開する。
昔から本が好きで、小、中学生あたりの頃は暇さえあれば本屋や図書館に行って気になる本を見つけては読んでいましたが、最近はもっぱら決まった作家の本や、勉強や趣味で必要な本ばかり読んでいました。
なのでこうして新たな本と出会うという体験の面白さを改めて教えられたような気がして楽しかったです。
ちなみに商店街の飲食店を2回利用するとブックカバーがもらえます。自分もスパゲティとお菓子屋さんへ行って無事ゲットしました。大切に使おう~
「セルフ屋敷2」コタケマン
このエリアで最も衝撃が大きかったのはここです。
外観は普通ですが・・・
中はこんな感じで「命の誕生」をテーマにした独特な世界が広がっています。
産まれること、生きることを多くの人は美しい、素晴らしいと思うのかもしれませんがそうしたものって子どものころからどうにも真正面から受け止めることができません。
入り口で「命の誕生」がテーマだと聞いて内心、ゲッ!と思っていたのですが、屋敷内の不気味な装飾と禍々しく模された生物の器官をみていると、そうした"良くない"思想も肯定されずとも赦されるような気分になりました。
猫の死骸?本物?悲しい。ちょっとかわいい。
・・・つづく・・・