北アルプス国際芸術祭~源流エリア~
長靴に履き替えて地下室へと下っていくと、
そこには季節外れの雪が敷き詰められていました。
・
・
・
「不可視な都市:ロング・グッドバイ」 新津保建秀+池上高志
雪の積もったひんやりとした部屋の壁には望遠鏡で覗いた街が投影されていました。
薄暗く、ノイズのようなものも流れていたので少し不気味でしたが、懐かしくもありあたたかさを感じるような不思議な空間でした。
入り口にあった黒板。
倉庫にモノを置いていくように人間がモノを記憶するならば、例えば倉庫に仮想の新雪をいっぱい入れて、静かにその上を歩く音を聞いてみよう。映像と音が作り出す異なる時空性。これはそんな仮想の雪と映像の作品です。
「ACT」マーリア・ヴィルッカラ
普段は客席で見上げている場所から。
慣れない景色で少し気恥しいような気もしました。
譜面台の前に立つと上から霧が出てきて面白いです。
舞台のあちこちに水槽があって上から垂れてくる水が小気味良い音を奏でていました。
壁に埋め込まれていた水槽にいた魚。
どうやって縦に泳いでいるんだろう?水が下から上へ流れていたからか?
「山の唄」大平由香理
龍に乗った少年の像を街のあちこちで見かけたのですが、その少年の伝説をモチーフに制作された作品。
作家は自身を小太郎に、作品をその母・犀龍に見立て、ここから始まる新しい物語を描き出す。作家は言う、「山はいろいろなものを生み出した、始まりの場所なのだ」
「Trieb ―雨為る森―」遠藤利克
宮の森自然園の林のあちらこちらの木から雨が降っていました。
激しい雨、静かな雨いろいろあって面白かったです。
入り口には熊よけ鈴があり、熊がでるのかなと少し怯えました・・・
「水面の風景―水の中の光~山間のモノリス」平田五郎
数年前までゲンジホタルが飛び交っていた大出ホタルの里。平田は2014年よりこの地に再びホタルを飛翔させ、大出地区の水をめぐる文化·歴史·環境を呼び戻すための作品を制作している。
今回は2014年に制作した作品から湧きでる水のための濾過装置を2基つくる。
メダカとか泳がせたらよさそう・・・とか思ってましたがこれらの作品はホタルを呼び戻すための装置でした。
林の中に人間が作ったものが突然出現すると、なんだかドキっとして楽しいです。
「土の泉」淺井裕介
大町名店街の地面に描いてあった絵も手掛けた方の作品です。
土の絵の具で描かれています。制作過程を思うと気の遠くなるような大きさですね。
この方の作品を新潟の大地の芸術祭で見たときにすごく印象に残っていたので
またこうして作品と出会うことができて良かったです。
この作品が展示されていたエネルギー博物館の敷地内に湯場の石仏群がありました。
この石仏群は大町ダム湖に水没した葛温泉に至る古径に設置されていた石仏の一部を移設したもので、30体程度ありました。
今ダムがあるところに、かつて人々の生活があったことってなかなか想像できないですが、こうして移された石仏をみるとなんとなく想像できるような気がしました。
「龍の棲家」岡村桂三郎
この作品は写真を撮らなかったので芸術祭のホームページでご覧ください。
なんというか、ここに展示されている作品が今回の芸術祭で一番好きだったかもしれません。
「源汲・林間テラス」川俣正
川俣は今回、源汲(げんゆ)と呼ばれる山麓の集落に、2018年の稼働に向けて建設される一般廃棄物処理施設「北アルプスエコパーク」の緩衝林のなかで作品を制作する。
芸術祭会期中も「工事中」であるこの場所を中心に、地域と環境に寄り添うさまざまな森林アクティビティを活性化するため、森林に関わる地元の専門家や海外からの作家を招き、「北アルプス林間芸術学校」を開講予定。
「制作プロセスそのもの」も作品であると考える川俣ならではの作品。
カエルとなぞのうねり虫。
「龍(たつ)」パトリック・トゥットフオコ
ちょっと怖い目。
地元に伝わる伝説「犀龍と泉小太郎」をモチーフとした作品。
伝説で龍が人々を助ける様が、地域活性化のために芸術祭が行われる状況に似ていると感じた作家が、水神の象徴である龍の目に焦点を当て、現代に新たな龍を視覚化させる。
「Arc ZERO」ジェームズ・タップスコット
仏崎観音寺の参道にかかる太鼓橋を、こちら側とあちら側の世界を通り抜ける「Gateway」ととらえ、橋を包み込む光る霧のリングをつくりだす。観客がリングを通り抜けると、ある種の浄化作用を体験する。
神社仏閣の参道には林や砂利道が設けられています。それは訪れたものが普段住む俗世とは違う空間を演出し、これから神聖な場へと向かうのだという心積もりをさせるためです。
その2つの世界は普通、徐々に交わっていくものですがこの作品のようにこちら側とあちら側の境界をゲートによって明確に分け、そして霧によって浄化するというのが新鮮で面白かったです。
もう日が暮れかかっているころでしたが、リングが放つ光に迫力があって見応えがありました。
この作品があった仏崎観音寺についてはまた別の記事でまとめます。
・・・おまけ・・・
道端の廃バス